続・東京鉄道遺産12 総武線の隅田川橋梁
2021年 09月 10日
総武線の両国駅と浅草橋駅の間の
隅田川に架かる橋梁。
昭和7年(1933)に竣工した、
やや細めのアーチがうつくしい鉄橋。
両国駅が明治37年(1904)に開業してから
実に29年後である。
それは、秋葉原周辺での官設鉄道、甲武鉄道、
日本鉄道の接続がなかなか決まらない
という事情や、
大正12年(1923)関東大震災が
発生したことなどが影響した。
橋梁の設計者は鉄道省の田中豊氏で、
上流に架かる東武鉄道の隅田川橋梁を
手掛けている。
同じ橋にならなかったのは、
「同じデザインの橋梁を隅田川に架けない」
という震災復興橋梁で示された
デザインポリシーだった。
鉄道橋では日本では初めてという
ランガー橋が採用された。
アーチ橋の一種で、上弦をアーチ、
下弦をプレートガーターで造っている。
これは、少ない斜材で強度を高いまま保てる
メリットがある。
設計者田中豊氏は、
総武線の隅田川鉄橋が竣工した翌年に
鉄道省を退官して、
東京帝国大学工学部の教授に就任した。
したがって、総武線隅田川鉄橋が
鉄道省における最後の鉄橋となった。
土木学会は昭和41年(1966)
橋梁技術に対する功績をたたえる賞として
「田中賞」を創設した。
これは、田中豊氏の功績に因んだ名称という。
総武線隅田川鉄橋の上部構造は
横河橋梁製作所で製造されている。
東武鉄道の隅田川橋梁も
同社で製造されている。
更に、神田川の柳橋も同社で造られている。
柳橋は、神田川が総武隅田川橋梁と両国橋の間
で隅田川に合流する直前の道路橋。
鋼板にリベット組みした美しい橋で、
総武線隅田川橋梁に竣工3年前の、
昭和4年(1929)に架けられている。
現在、東京都中央区の
区民有形文化財に登録されている。
また、ドラマなどのロケでよく使われている。